東京土産はよろける。

社長が出張に出かけた。
とても大切な方と夕食を共にするらしく、ひとかたならぬご厚情に謝すると同時に、旧に倍するご高配を賜るべく、心がこもって溢れるくらいの手土産を用意しろという。
東京からわざわざ と、相手に一発で伝わるものを探せとも言う。

東京といえばの手土産って何?と、社内が蜂の巣を突っつくような騒ぎとなり、銀座三越の和洋菓子バイヤーの女性も巻き込んでの大捜査線が繰り広げられた。

三越銀座の地下はよくわかっている。
ホームページのフロワーガイドを見ながら私は話をし、バイヤーさんは店舗の商品をチェックしながら説明してくれる。

結局、これぞ東京!というお菓子は多くなく、指定した予算でそれなりの量を作るのは、虎屋しかなかった。

社長に虎屋のクソ重い箱を持たせるのは気が引けたので、一旦三越は諦めた。

ネットで検索したら赤坂青野の菓子を皇室御用達の漆器、山田平安堂の重箱に入れた逸品もあったが、青野に電話すると、山田平安堂仕切りなのでお重の在庫は無いという。
山田平安堂に電話すると、本商品はネットオンリーだという。
途方に暮れて社長に報告すると、「やっぱり、虎屋なんだろうね」と言う。
(社長、そんなこと言って大丈夫?持って運ぶの貴方ですよ)と思ったが、(ま、いっか)とそこは収めた。

翌朝、敏腕秘書が虎屋経由で出社した。
虎屋本店で名代の羊羹を筆頭に幾つかの商品を詰め合わせてもらい、3セットを購入して、大きな袋に詰めて貰った。受け取った瞬間よろけたらしい。推定重量15キロをタクシーで会社まで運んできた。

社長が出かけた。
袋を持ち上げた瞬間、よろけていた。

しばらくして空港からメールがきた。

「空港チェックイン完了。検査場職員、虎屋の袋を気楽に持ち上げ、よろけてました。」

東京土産はよろける。
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